医療法人須佐病院

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再生医療

BMC骨髄内注入治療について

骨髄異常病変(BML:Bone marrow lesion)とは

骨髄異常病変(BML: Bone marrow lesion、以下BMLと記載します)はMRIで発見することのできる骨髄内の異常のことを言い、軟骨の下の骨の微小骨折による骨髄内の炎症または浮腫(水分が骨に溜まった状態)、壊死(骨が死んでしまった状態)をあらわすとされています。
BMLと痛みには強い関係があることが示されていて、特にBMLは変形性膝関節症の治療として、PRPなどの関節注射を行っても改善しない痛み原因として近年注目されています。
さらにBMLは変形性関節症、骨壊死などの病気の進行にも関連しており、早期の治療が望ましいとされています。

BMC骨髄内注入治療とは

BMC骨髄内注入治療はBMLによって生じる痛みや痛んだ骨の再生を目的とした治療です。
BMC骨髄内注入治療は患者様自身の腸骨より、骨髄液を採取し、承認された医療機器Angel cPRP/BMC システム(Arthrex Japan)を使って生成した濃縮骨髄液(以下、BMC)を細いドリルを使って骨に穴を空け病巣部に移植します。
また、関節の軟骨が削れてしまって、骨髄内にBMCを注入しても漏れ出てしまうような場合は、患者さんの膝から少量の軟骨を採取して、削れてしまった部分に移植を行います。
BMCには骨や血管を再生させる細胞や成長因子を含む様々な因子が多数含まれていますが、それらの濃度を高めることで治療効果を高めます。BMC骨髄内注入治療はBMLに関連する骨の痛みや病気の進行の抑止を目的として欧米を中心に報告され、以下のような良い成績が示されています。

PRPの関節内注射と骨内注射を反復的に受けている1084名の中期から末期の変形性膝関節症の変形の患者さんは平均的に5.3年人工関節置換術を受けずにいることができました。また、PRP療法を受けてから5年後に平均的に85.7%が人工関節を受けずに済みました。(2021, Sánchez, IntOrthop)

こんな方はBMC骨髄内注入治療がおすすめ

•BMCの骨内注射は体に金属を入れることなく、骨の痛みの改善が期待できる治療です。
•骨の変形があまり強くはなく、PRP関節内注射をいくら行っても痛みが取れないBMLのある患者様
•人工関節手術を望まない患者様
•社会的な状況により入院やリハビリの時間が十分に取れない患者様

上記の方は一度検討いただく価値のある治療と考えます。BMCは、いずれも患者様自身の血液や骨髄液から製造するため、患者さまご自身の体調などの理由により品質がばらつく可能性があります。その一方で、患者さま自身の血液から製造するため、アレルギー反応などの可能性は極めて低いと考えられます。

BMC骨髄内注入治療のメリットとデメリット

【メリット】
自己組織由来なのでアレルギーが起こりにくいです。
日帰りでの処置が可能です(骨髄液または末梢血の採取、細胞の投与も同じ日に実施します)。
関節の痛みには滑膜(関節を覆うカプセルのようなもの)の痛みと骨の痛みがありますが、この治療はどちらに対しても効果が期待できます。
細胞の採取と投与のため腰と治療を行う関節に5mm程度の小さな傷はできますが、保険診療内で行われている手術(人工関節や骨切り術)と比較すると、体に対する負担が少ないと言えます。
自分の関節を温存する一般的な手術(骨切り術)と比べ、比較的早期に日常生活に復帰可能です。当日帰宅でき、治療後3週間程度までは松葉づえを使って治療した関節に体重がかからないように生活し、治療後6週間ごろから徐々に体重をかけていき、治療後の経過状況によっては9週目までには松葉杖なしで生活を行う事も可能です。骨の状態によって期間は変化し、短い場合では3週間程度で松葉杖なしで生活することも可能です。

【デメリット】
骨髄液採取をする場合には腸骨に骨髄穿刺針を刺す行為が必要となります。その際に、腸骨の骨折、出血、神経損傷、異常な骨の出現、痛みや感染が起きる可能性があります。また、BMC調製時における細菌などの混入、BMCを移植する際に、神経損傷、血管損傷・出血、骨折がリスクとして考えられます。
術後においては骨折、感染症、血腫、皮下内出血、大腿周囲の痺れ(外側大腿皮神経障害)、下肢静脈血栓症、肺動脈血栓症がリスクとして考えられますが、これらの事象が起きた場合には最善の処置を行います。
調製したBMCが規格を満たさない場合や、調製途中で発生した問題により調製が完了しなかった場合など、骨髄液採取を行ったにもかかわらず、BMC投与ができない場合があります。
注射部位に硬さ・しこりが残ることがあります
本治療は自由診療です。社会保険や国民健康保険など公的医療保険の適用を受けることができません。

ここに記載した治療の短所は、一般的な整形外科におけるこれまでの知識と経験から起こりうるものを記載しております。ただし、その発生率については、実施数が限られていることから、明確な発生率は明らかになっておりません。

治療の方法

手術当日、経過観察のために当院にご来院いただく必要があります。
治療は以下の順でおこないます。
止血と成長因子を骨にとどめるために患者さんの血液からトロンビンという骨髄液を固める成分を抽出し、BMCと一緒に注入します。
治療は全身麻酔または腰椎麻酔で行います。治療中は麻酔が効いていますので痛みを感じることはありません。
骨髄液は骨髄内の異常の大きさにより、60~320ml採取を行います。骨髄液の量が必要な場合は左右の腸骨(腰の骨)から採取を行います。
医師の判断でBMCに患者さんの血液から調整した多血小板血漿(以下、PRP)を同時に注入することもありますが、その際はあらかじめ医師からご説明いたします。
採取した骨髄液または末梢血を遠心分離することにより、1治療箇所につきBMCを10~40ml生成し、注入します(骨の質が悪い場合には患者様自身の骨を少量採取、または、人工骨をBMCに混ぜて注入します。)。
骨の質が悪い場合には、人工骨をBMCに混ぜて注入します。
病巣部付近の骨や軟骨が欠けている場合には、患者さんの膝から軟骨を採取し、欠損部へ移植をおこないます。
骨内に注入できなかったBMCは関節内に注射器で注入します。欧米や日本でBMCは関節の炎症や痛みを抑制目的で変形性関節症などの治療で使用されています。
治療後は、異常がないことを確認するため定期的に(概ね、1週間後、1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後)に通院していただく必要があります。

治療にかかる費用について

当施設にて全額自己負担として治療費をお支払いいただきます。
また、血液採取後、麻酔後に同意を撤回された場合、費用はお返しできませんのでご注意ください
本治療に係る費用は患者様の症状などにより患者様毎に異なります。
施術する前に詳細な施術料金を提示いたしますので、ご納得いただいた上、受療いただきますようお願い申し上げます。

診察料(診察のみの場合) 3300円
血液検査(初診料込) 14300円
BMC骨髄内注入治療(1部位、1回) 1650000円

お問合せ

この治療の内容について、わからないことや、疑問、質問、もう一度聞きたいこと、さらに詳しく知りたい情報などがございましたら、遠慮せずにいつでもお尋ねください。
治療が終わった後でも、お答えいたします。

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